「先生、この案件で借地の不動産価値がどう動くか、見てもらえませんか」——同族会社オーナー様の相続をご担当される税理士の先生方から、こうしたお声がけをいただくことがあります。
無償返還の届出が出ている土地は「届出があるから安心」と語られがちですが、いざ評価を組み立てる段になると、不動産価値の側面で先生方の手が止まる場面が少なからずあります。
税法の細部は税理士の先生方のご専門領域です。本記事は、鑑定士として先生方とご一緒する案件で「不動産側の数字をどう見立てているか」を、現場で見えている景色に沿ってお話しするものです。

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同族会社×借地権の相続案件、ざっくりした構造

本題に入る前に、同族会社オーナー様の相続でこの論点が出てくる場面の構造を、ざっくりとだけ共有させてください。

同族会社が個人オーナーの土地を借りて建物を建てているケースで「土地の無償返還に関する届出書」が提出されている——これが本記事で扱う前提です。この状態で相続が発生すると、評価は地主個人の側と、会社株式の側、両方が連動して動きます

具体的な数字感としては、地主側の貸宅地は自用地価額のおおむね80%として整理され、会社株式の純資産価額方式では借地権相当額が自用地のおおむね20%として加算される、という形が一般的です。土地所有者と株式所有者が同族関係内にある場合、家全体としては自用地価額と整合する組み立てになります。

適用条件や個別判定は、相当地代の水準・改定方式・所有関係などによって細かく分かれます。このあたりの税務判断は、税理士の先生方のご専門領域です。本記事では深入りせず、必要最小限の通達は末尾の「参考通達・条文一覧」にまとめてあります。

ここから先は、この構造の中で「不動産価値の側面」に絞って、鑑定士として税理士の先生方からどんなご相談をいただいているか、現場で見えている景色をお話しします。

税理士の先生方からご依頼いただく典型3シーン

税理士の先生方から「この案件、不動産側の数字をどう見立てたらよいか」とご照会いただく場面を、現場でよくいただく順に3つ、ご紹介します。

鑑定士へよくご依頼いただく3つの場面

01
過去時点の更地価額
遡及評価
02
近隣の実勢地代水準
マーケット整理
03
純資産価額への投入
会社借地権の評価

シーン①:過去時点の更地価額・権利金水準を遡って評価する

場面:「契約書には『将来無償で返還する』と書いてあるが、税務署への届出書の控えが見当たらない」「契約締結時点の更地価額や、当時の権利金慣行を確認したい」——こうしたご相談を税理士の先生からいただくことがあります。

鑑定士として何をご提供するか:地価公示・路線価・基準地価の時系列、近隣の取引事例の蓄積から、過去時点の更地価額の合理的な見立てをお出しします。あわせて、当時の地域・用途で実際にどの程度の権利金水準が成立していたかについても、可能な範囲で整理してお伝えします。

現場で見えている景色:過去時点の地価水準を遡って組み立てる作業は、鑑定実務でも難度の高い論点です。「20年前のこの地域、この用途」と特定して掘っていくと、地価公示と路線価の動きにギャップがあったり、当時の権利金慣行が今と違ったりと、新鮮な発見があります。先生方の税務対応の根拠資料としてお使いいただける形に、丁寧にお出しすることを心がけています。

シーン②:近隣の実勢地代水準を整理する

場面:「父の土地に長男が家を建てて住んでいる。地代は固定資産税相当額だけ払っている」「使用貸借か賃貸借か、地代水準の妥当性が論点になっている」——こうした親族間ケースで、判定の根拠を補強したいというご相談をいただきます。

鑑定士として何をご提供するか:対象地の近隣で実際に成立している実勢地代水準・更地価額に対する地代利回り・固定資産税負担との比較などを整理してお出しします。鑑定評価で扱う「継続賃料」「新規賃料」の枠組みを使えば、地代水準の妥当性をひとつずつ客観データで裏付けることができます。

現場で見えている景色:実勢地代の調査は、公開データに出てこない情報が多く、地道な事例収集とヒアリングの世界です。「この地域のこの用途で、平米あたり月額いくら」という相場感は、不動産マーケットに長く触れていないと持ちづらい感覚です。先生方の税務判定の裏付け資料として、外に出して恥ずかしくない品質でお出しすることが、鑑定士の役どころだと考えています。

シーン③:純資産価額方式に投入する不動産評価をご提供する

場面:同族会社の株式を純資産価額方式で評価される際に、会社が保有する借地権・建物の不動産評価をご提供してほしい——というご依頼です。事業承継のタイミングや、相続開始後の株価評価で、典型的にいただくご相談です。

鑑定士として何をご提供するか:取引事例比較法・収益還元法・原価法を組み合わせ、会社所有の借地権・建物の経済価値の見立てをお出しします。先生方が純資産価額方式で計算される際の、不動産側のインプットデータとしてお使いいただく前提です。

現場で見えている景色:このシーンで興味深いのは、税務評価と経済価値が一致しないケースに出会うことです。たとえば相当地代の据置方式で長年運用されてきた会社では、地価上昇分の経済価値が借地人側に蓄積していることがあります。「税務上の20%」と「経済実態としての価値」の乖離をどう先生方にお伝えするか——ここは鑑定士として一番頭を使うところです。

実務メモ|鑑定実務で税理士から照会を受けた場面(差し込み枠)

※ここに、ゆいさんが大手鑑定事務所時代またはYUI受任案件で、税理士の先生から無償返還の届出があるケースについて鑑定評価のご依頼を受けた具体的な事例を差し込み予定。抽象化された形でOKです。

銀行員時代に見た景色|担保評価と税務評価のギャップ

もうひとつ、税理士の先生方とお話しする際に必ず触れる論点があります。「相続後に動かす段で出てくる、担保評価と税務評価のギャップ」です。これは私が都市銀行の融資課に在籍していた頃から見てきた景色で、税務評価だけを見ていると気づきにくい論点です。

無償返還の届出があっても、金融機関の担保評価では「借地権の付着した底地」として、担保価値を保守的に見積もるのが一般的です。つまり、相続税申告で「自用地×80%」として評価された土地が、いざ相続後に融資の担保として差し入れる段になると、それより低い水準でしか担保評価されないことがあります。

これが効いてくるのは、相続後の納税資金借入物件処分の資金繰りです。「税務評価では○○円ある土地だから大丈夫」と思っていたのに、いざ動かす段で資金繰りに詰まる——というケースが現場では起きます。

このギャップをご家族と税理士の先生に事前にお伝えしておけるかどうかで、相続後の意思決定の質が変わります。鑑定士の視点と元銀行員の視点の両方を持っているからこそ気づける景色を、案件の早い段階で差し入れる——それが私が連携でお役に立てる、もうひとつの軸です。

実務メモ|銀行員時代に見た同族会社の借地構造(差し込み枠)

※ここに、ゆいさんの都市銀行融資課時代に見た同族会社オーナー案件のエピソードを差し込み予定。「税務評価と担保評価のギャップが相続後に効いてきたケース」等、抽象化された具体例を想定。

税理士の先生方とご一緒する形|YUIアドバイザリーの連携スタンス

同族会社×借地権×相続の案件は、まずは税法(税理士)と鑑定評価(鑑定士)の連携が中核です。さらに事業承継や物件処分が絡む場面では、財務・ファイナンスの視点が効いてきます。YUIアドバイザリーは、税理士の先生方が司令塔を務められる現場に、鑑定士として並走するスタンスでお手伝いしています。

貸宅地・借地権の鑑定評価書の作成

申告書添付資料や税務調査の場面で、先生方がお使いいただく前提の鑑定書を作成します。過去時点遡及評価にも対応します。

純資産価額方式に投入する不動産評価のご提供

会社が保有する借地権・建物の鑑定評価をご提供します。先生方の株価評価作業の入力データとしてお使いいただけます。

ご家族の合意形成のための「見える化」資料作成

専門用語の塊である借地権論点を、ご家族が納得して意思決定できる図解資料に翻訳します。先生方の説明資料の補助としてもお使いいただけます。

関連する考え方は「相続税申告の不動産評価|税理士が押さえるべき資料読解5つの視点」でも整理しています。あわせてご覧ください。

参考通達・条文一覧

  • 法人税基本通達13-1-7:無償返還届出書の提出による権利金認定の見合わせ
  • 法人税基本通達13-1-2/13-1-3/13-1-4:相当の地代の算定式・地代認定課税等
  • 所得税法第59条/所得税基本通達59-5:個人から法人への借地権無償返還等に関するみなし譲渡課税
  • 使用貸借通達(昭和48年11月1日付直資2-189):個人間の使用貸借における借地権の贈与税課税の不適用
  • 相当地代通達(昭和60年6月5日付課資2-58):相当の地代を支払う場合の借地権・底地の相続税評価。特に通達6は、無償返還の届出があり相当の地代要件を満たす場合の貸宅地評価(自用地×80%)の根拠となる

税理士の先生方からのご相談・ご紹介を歓迎します

「無償返還の届出がある土地、不動産価値はどう見立てたらいいか」「相続後の担保評価と税務評価のギャップを事前に把握しておきたい」——こうした不動産側の論点について、申告書添付や税務調査の場面で先生方がお使いいただく鑑定評価書の作成、純資産価額方式に投入する不動産評価のご提供、ご家族説明資料の見える化など、先生方の伴走役としてお手伝いしています。

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